大階段と演出家の挑戦~大いなるマンネリ~
宝塚の象徴とも言える大階段。
初めて登場したのは1927年の『モン・パリ』
この作品は日本で初めて公演されたレビューショーでもある。
宝塚レビューショーの歴史は、大階段の歴史でもある!(飛躍しすぎか笑)
大階段は毎公演必ず最後のパレードで使用されることが決まりとなっている。
一時期大階段が出なかったこともあるそうだが、
『なぜフィナーレに大階段を出さない?大いなるマンネリでいいじゃないか!』という小林公平さんの一言によって毎公演ラストには大階段が登場するのが決まりとなった。と、装置家の大橋泰弘先生が仰っていた。
しかし常に演出家達はこの大いなるマンネリに挑み続けている。
その中でも演出家の草野旦先生は斬新な演出を取り入れてきた。
特に大階段の演出で印象深い2作品をご紹介する。
『オペラ・トロピカル』
1983年花組の順みつきさん主演で上演されたレビューショー。
こちらは宝塚史に名高い、全編“大階段出しっぱなしショー”である。
大階段の横には影段がいくつも用意され、どの段からでも、どこからでも出ハケできるように工夫されていた。
常に大階段があり、動きに制限がかかってしまうのにも関わらず飽きのこないように演出され、草野先生らしい熱いエキゾチックなショーは、観た人がみんな口を揃えて面白かったと言う名作。
現在活躍中の演出家の先生たちにも、この作品に感銘を受けたなどというエピソードが聞かれ、いまもなお伝説の作品である。
『ON THE 5th』
2002年雪組の絵麻緒ゆうさん主演で上演されたグランドショー。
ニューヨークの5番街をイメージしたハイセンスでゴージャス、そしてスピーディなショー作品。
公演の上演発表が911の事件の翌日だったそうで、
作品の中でも急遽追加になったであろう、追悼のシーンが描かれてはいたものの、見る人の気持ちが重くなりすぎないような絶妙なバランスで描かれていて配慮を感じる。
この作品ではパレードは通常通り行われ、大階段もちゃんとでてくる。
が!そこで終わりではない。
フィナーレが終わると大階段がハケてしまう。
絵麻緒ゆうさんが紙吹雪舞うなかタップを披露する姿は印象的。
さらに雪組生たちも揃いタップを披露し、幕となる。
最後に大階段はでてこない!
というこれもまた斬新な演出で話題となった。
この頃より吊り上げ方式で収納されていた大階段はさらに進化し、収納時間が短縮され、現在と同じく2分20秒になったと思われる。
この進化により、可能になった演出だったと後に草野先生は語られている。
“宝塚らしくない”などといわれてきた草野旦先生。
初期ごろには大階段を全く登場させないこともあったそうで、すごく怒られたと語っています。
もしかしてその反動で『全編大階段出しちゃえ!』なんていう発想に!?
たくさんの演出家さんたちの挑戦のおかげで、フィナーレの大階段の滞在時間のバランスは長くもなく、短くもないあの定番のフィナーレとなったのでしょう。
それが型になって、様式になり、マンネリから伝統になったわけです!素晴らしいことですね。
それこそ私達が宝塚を観た!と満足できる黄金比率なのですね。
フィナーレがもっとみたくなってきましたね!
もう少しお話したい所ですが、長くなってしまったので、次回『オペラ・トロピカル』に影響を受けた先生の作品のお話をさせていただきますね。
『33年越しの大階段出しっぱなしショー』とはなんでしょうか。
また次週お楽しみに!